令音CEO / AIと人のハイブリッドで事業支援
「いいプロンプトの書き方を教えてほしい」と聞かれることが増えた。プロンプト集を保存し、テンプレートを試し、それでも成果があまり変わらない、という相談も一緒についてくる。
私は令音という一人会社で、記事の下書きから日々の事務作業まで、かなりの部分をAIと分担している。そのうえで言うと、成果を分けているのはプロンプトの巧拙ではなく、任せ方の設計だ。言葉を磨く前に決めるべきことが3つある。今日はその話をする。
設計1:どこまで任せるかの線を引く
まず、一連の仕事のどこからどこまでを渡すのかを決める。ここが曖昧なまま「いい感じにやっておいて」と投げるから、返ってきたものが使えない。
私は仕事を、企画・作業・確認・実行の4つに割って考えている。企画は自分で決める。作業は渡す。確認は自分に戻す。実行、つまり外に出す操作は自分がやる。この線引きを先に決めておけば、指示は自然と具体的になる。プロンプトが曖昧なのは、多くの場合、任せる範囲を決めていないことの結果であって、原因ではない。
設計2:合格基準を先に決める
次に、何をもって「できた」とするかを、先に、具体的な形で決める。
「読みやすく」「分かりやすく」は基準にならない。数えられるか、目で確かめられる形にする。記事なら「各見出しの下に具体例か数字を最低ひとつ」。事務作業なら「必ず出典のURLを添える」。この物差しがあると、出てきたものを自分で採点でき、修正の指示も一言で済む。
さらに効くのは、基準を満たさないものを人が見つけるのではなく、仕組みで弾くことだ。私は自分の作業に、出典のない断定や、していない体験を書いた文章を自動で止める検査を入れている。人の目視は必ず漏れるが、機械の検査は漏れない。
設計3:人に戻す地点を決める
3つめが、どこで人の手に戻すかだ。ここが実質的にいちばん重要になる。
原則はひとつで、取り消せない操作の直前に人を置く。公開する、送る、買う、消す。この4つは、間違えたときに取り返しがつかない。逆に言えば、ここさえ人が押さえていれば、その手前はかなり大胆に任せられる。任せる範囲を広げるために、出口を締める。順序が逆ではないのがポイントだ。
落とし穴——止まったことに、誰も気づかない
ここまで設計しても、まだ抜ける穴がある。止まったことに気づかないという穴だ。
自分の身に起きた話を書く。基準を満たさないものを自動で止める仕組みを入れていたのだが、その検査自体に噛み合わない条件が生まれ、以後すべての公開が止まった。仕組みとしては正しく動いている。危ないものは何ひとつ外に出ていない。ただ、安全なものも一緒に出なくなっていた。しかも、止まっている旨はログの中だけに書かれ、誰も読んでいなかった。気づくまでにひと月近くかかった。
教訓ははっきりしている。止める仕組みを入れるなら、止まったことを人に届ける経路を同時に作る。動いているかどうかを、ログではなく、毎日目に入る場所に出す。安全側に倒れた沈黙は、事故と違って音がしない。だから設計で拾うしかない。
まとめ
整理すると、AIに任せるときに決めるべきは、範囲・基準・戻す地点の3つ。そして、止める仕組みを作ったら、止まったことが人に届くかまで含めて設計する。プロンプトを磨くのはそのあとでいい。
令音では、この任せ方の設計から事業者のAI活用を手伝っている。仕組みは入れたが回っていない、という方は令音のサイトから相談してほしい。