令音CEO / AIと人のハイブリッドで事業支援
人手不足の話は、たいてい「採用できない」で止まる。求人を出しても応募が来ない、来ても続かない。地方であればなおさらだ。だが採用の話をいくら続けても、目の前の仕事は減らない。
私は令音という一人会社を営みながら、地方の小さな会社の事務仕事を外から手伝っている。その仕事を通して思うのは、AIの恩恵をいちばん受け取れるのは、実は小さな組織のほうだということだ。今日はその理由と、どこから手をつけるかを書く。
なぜ小さいほうが効くのか
大企業でAIを入れる話は、たいてい長い。誰の仕事がどう変わるかを調整し、部署をまたいで合意を取り、規程を整える。導入が決まるまでに季節が変わる。
小規模事業者にはその工程がない。決める人と使う人が同じだからだ。思いついた翌日に試せる。合わなければやめられる。この速さは、規模の小ささが生む数少ない優位のひとつだ。
もうひとつ、構造的な理由がある。小さな会社では、一人が経理も広報も問い合わせ対応も抱えている。この「何役もこなす」状態は、担当者にとっては負荷でしかないが、AIの守備範囲とほぼ重なる。専門性の頂点ではなく、種類の多い定型作業。そこがいちばん任せやすい。
最初に任せる3つ
では何から渡すか。私が実際に手を動かしてきて、外れが少なかったのはこの3つだ。
- 定型の書き物——案内文、議事録の整形、報告書のたたき台。毎回ゼロから書いているが、実は型が決まっているもの
- 調べもの——制度や補助金の要件確認、他社事例の当たりをつける作業。最終確認は人がやる前提で、探す工程だけ任せる
- 下書き全般——白紙から書き始める一番しんどい部分を引き受けてもらい、人は直す側に回る
共通しているのは、間違っていても取り返しがつく工程だという点だ。ここから始めると、失敗が事故にならない。
人に残すもの——判断と、外に出す操作
逆に、渡してはいけないものもはっきりしている。判断と、外に出す操作だ。
何を優先するか、誰に何を約束するか、いくらで受けるか。これは事業そのものなので、外注もAI化もできない。そして、公開・送信・支払い・削除といった取り消せない操作は、必ず人が最後に一度見る形にしておく。
私は自分の業務を自動化するとき、この線を必ず引いている。作るところまでは自動で進み、外に出す直前で人の承認を待つ。ここを面倒がって全自動にすると、間違いがそのまま世に出る。人手不足を補うために入れた仕組みで、後始末の仕事を増やしては本末転倒だ。
「導入」と考えないほうがいい
最後にひとつ。AI導入という言葉で考えないほうがうまくいく、というのが実感だ。
導入と身構えると、予算と計画と担当者の話になり、そこで止まる。そうではなく、今週いちばん面倒だった作業をひとつ選び、それだけ任せてみる。効いたら残す、効かなければやめる。この粒度なら、決裁も研修もいらない。小さな組織にはこのやり方のほうが合っている。
人手不足は当面続く。だが、足りないのは人手であって、必ずしも人数ではない。手を減らす道があるなら、そこから先に手をつけたほうが早い。
令音では、どの作業を任せてどこを人に残すかという線引きから、事業者のAI活用を手伝っている。何から始めるか迷っている方は、令音のサイトから気軽に相談してほしい。